応用行動分析は結果の出る確率が高い
応用行動分析(Applied Behavior Analysis)との出会いは、1999年、アメリカのボストン郊外に滞在していた時にさかのぼる。長い付き合いとなった。
当時、”Let Me Hear Your Voice: A Family's Triumph over Autism”(著者 Catherine Maurice, 邦題「我が子よ、声を聞かせて」)が大きな反響を呼んでいた。
Dr. O. Ivar Lovaasの論文 “Behavioral Treatment and Normal Intellectual Functioning in Young Children with Autism” or the “1987 Study” に触発され、応用行動分析による療育を行い、自閉症の兄弟の症状を大きく改善させたという内容だ。
大きな反響に応えるためか、1996年に、Catherine Maurice, Dr. Bridget A. TaylorとDr. Gina Greenは“Behavioral Intervention for Young Children With Autism: A Manual for Parents and Professionals” を出版し、療育のバイブルとされていた。
Dr. Gina Greenは、ボストン郊外にあるNew England Center for Children(NECC) のリサーチダイレクターを務めていた。
NECCは“the National Award for Model Professional Development from the U.S. Department of Education”を受賞している。
当時、Dr. Gina Greenのところに、足しげく通い、本当にいろいろなことを直接教えてもらった。
厳格だが、気さくで、親切な人で、立ち話のまま2-3時間話してくれることもしばしばであった。
また、Beacon ABA Services, Inc. (Beacon)のsenior therapistであったDr. Jillにもスパーバイズしてもらいながら、多くのことを教わった。
指示の出し方、強化のタイミングなど、細かなことをしつこく質問しても、嫌な顔をする事なく答えてくれた。
帰国に際しては、駒澤大学にいらした小野浩一先生や横浜国立大学の渡部匡隆先生に、親切にいろいろなことを教えていただいた。
義理を欠いているが、感謝の気持ちは決して忘れていない。
日本では、上智大学にいらした中野良顯先生に長らく大変お世話になった。
当時、中野研究室の院生であった山本崇博さん(現在、一般社団法人キッズライン代表理事)とは、今も交流があり、お世話になっている。
クリニックでお話しすることは、応用行動分析の考え方や手法がベースとなっている。
ただし、応用行動分析だけに固執するつもりはない。
お困りごとが減ったり、できなかったことができるようになったり、結果さえ出れば、どのようなやり方でも良いと考えているし、取り入れていきたい。
世間には、いわゆる「療育」サービスが増えてきている。
公的なものも民間によるものがある。
「療育」サービスを利用する目的はいくつかあるに違いない。
ひとによって求めることは異なるだろう。
何となく「良くなるだろう」と考え、「療育」を行うことには意味はないように思う。
早期療育のための貴重な時間が無駄に過ぎていくだけと考える。
療育計画に照らし合わせ、結果が出ているかの評価をすることが大切だ。
100人のひとが見ても、ブレることなく、結果を評価できる具体性のある療育計画でなければ意味がない。
計画だけ作り、結果を評価しないのであれば、計画を作ることも「療育」も「やっています」というポーズに過ぎないように思える。
株式会社だけではなく、社会一般で、計画を作成して評価しないということはありえない。
「療育」が有効であるかを客観的に評価することは重要だ。
「科学的根拠がある」の
「科学的」とは「再現性がある」ということであり、
「根拠がある」」は「確率が高い」ということだ。
応用行動分析の考え方や手法をベースとする理由は、適切に行えば、誰にとっても、結果が出る可能性が高いためだ。
これまで、多くのひとたちの力を借り、協力をしてもらってきた。
そうしたひとたちへ感謝するとともに、困っているお母さん、お父さんや子どもたち、社会に対し、お借りしてきた力や協力をお返しできるように努力していきたい。